T  取材記 イタリア編(2) だまされた!(in RomaU

黒づくめの男性二人に連れて行かれた部屋にはもう一人のボスらしき男性が待ち受けていました。部屋にはタバコの煙が充満していて今度は「ローマの休日」ではなく「ゴッド・ファーザー」へと舞台が変わりました。

男は請求書を見ながら「キャビア料理を食べた上に女と踊ったんだろう?なぜ料金を払えないのだ!」と怖い顔で迫ります。ここは不要な発言は控えようと黙って通す決意をしました。

男が次に言ったことは「金を出せ!」でした。内ポケットにしまっていた予備金が入った封筒を出しかけたのですが5万円ほど入っているのを思い出してあわてて引っ込めたのです。それを見た相手はすかさずその封筒を出せと言います。とっさに浮かんだのは「これは恋人からのラブレターだ」とのこちらの返答にニヤッとしただけで無理に取ろうとはしません。私が「ポリスを呼ぶぞ!」と叫んだのが功を奏したのか、決して強圧的な態度に出ないのです。

「いくらなら出すんだ?」と聞いてきたのでこれで全部だ、と財布を広げてみせて9万リラ(約1.8万円)を渡したら「このゲストをホテルまで送れ」と控えている二人に命令。エッ、これで帰れるの?ホッとして個室を出て二人について玄関へ。そこに待機していた黒塗りのロールスロイスに乗車。一流ホテルのような車内に感動しましたがまだ緊張しているので十分味わえないまま自分のホテルへ。

さてホテルに到着。ここか?と二人が建物を見上げます。ホテルというよりも民宿に近い安宿で二人はがっかりした様子。一流のホテルなら再度請求しようと思っていたのでしょう。一人があきらめ顔で「Oh sorry(ごめん)!」と言ってハグしてきました。イタリアでは男同士がハグするシーンをよく見ますが先ほどまでの怖い顔が柔和になって車の中から「Good-bye!」と手を振り走り去ったのです。誰かが見ていたら超高級車で送られてきたあいつは何者だろうと思ったに違いありません。

部屋に帰ってから無事に生きて帰れたことにまず感謝していろいろと考えました。声をかけられてまんまとだまされたことは軽率でしたが支払った18,000円はディナーとダンス付きならあきらめられる金額です。それにしても私に声がけした男性は「金のない日本人は連れて来るな、アホ!」と叱責されていることでしょう。

そして内ポケットにしまった封筒と財布などを無理に取り上げなかった男たちにも感謝(?)の念が湧いてきました。今後、気をつけろよ!との勉強代だったと納得して眠りにつきました。

明日向かうナポリでまた高い勉強代を支払うことになろうとは考えもせずに・・。


このデザートは女性に踊りに誘われたため食べずに終わったものです。できることならデザート分だけでも返金して欲しい!

(つづく)