随想 第103回 月 

ちょうど30年前に発売になった写真集「月光浴」(石川賢治氏著)は満月の光だけで撮影された写真集で大変評判になりました。太陽よりも月が大好きな私は書店で見るなり衝動買いしてしまいました。

氏のホームページはこちら
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http://www.gekkouyoku.com/

この中の「月光写真展示室」で「銀閣寺 向月台」の作品を見ることができます。

そもそも銀閣寺(慈照寺)は月を愛でるために創られたのではないかと言われています。向月台や月待山などの名前がそれを物語っています。

飛鳥時代から、ずっと日本人は月を愛してきました。

和歌では「あけばまた 秋のなかばも すぎぬべし かたぶく月の おしきのみかは」(定家)、俳句では「名月や 池をめぐりて夜もすがら」(芭蕉)や「名月をとってくれろと泣く子かな」(一茶)などがあり、そして絵画でも月の名作は数えきれません。

暦でも西洋の太陽暦と比べて日本では月の満ち欠けの周期を基にした太陰暦を明治の初めまで使用していたのです。

光量は太陽光の46万分の1と言われていますがその弱い光が儚さ(はかなさ)を連想させて日本人の胸にせまります。そして栄枯盛衰の「無常観」にも通じ、京都の寺院にはことのほかマッチするようです。

暦の関係で、中秋の名月は必ずしも満月になるとは限らず、2020年は101日が「中秋の名月」で満月の日の前日だとのこと。
月光浴は満月の夜でないと撮影できず、しかもかなりの時間を要します。
でも月を写す場合は満月でなくても前景とうまく重ねれば良いアクセントになります。

虫の音を聴きながら満月から満月までの「月の満ち欠け」を撮影してみてはいかがでしょうか?