随想 第117回  人生の教訓 (後編)

さて今後どうすればいいのか、その回答が二つ目の「いくつになっても初体験はある」なのです。
人生には「初体験」は多いし、いくつになっても「初体験」が待っているのです。常に好奇心を失わず「初体験」に関心を持つか、それとも新しく起こることには全く興味を示さず、過去の体験と記憶にすがりついて生きるか、によってその人の人生は大きく変わってくる、と著者の邱永漢氏は力説します。

たとえば旅行に出かける場合でもできるだけ新規の開拓をする。行ったことがあるところでも二回目、三回目に行くと前に気がつかなかったことに気付くことがある。そして行ったことがないところだと、新しいことばかりだから興奮して胸がわくわくする。

これはレストランに行くときでも同じで、人間の足はついつい同じコースを歩きたがる。なので「行きつけの店」というのができてしまう。しかし、いつもそういうところにばかり足を運んでいると、だんだん世間にうとくなって、よそで何が起こっているかわからなくなってしまう。だから三度に一度は行ったことのない店に意識して出かけるようにしている。そうすれば新発見や参考になることに出会えることがあるとのこと。

いつも新鮮な気持ちを保つためには、周囲に慣れてしまわないことが大切なのだと言います。たしかに、歳をとってもまだまだ「初体験」が待っているのですね。
どうせ自分で人生に幕を下ろせないのですからこうして新鮮な気持ちを保ち、著者のように88歳まで長生きしようと思った次第です。
これを家族が聞いたらゾッとするでしょうが・・。