第30回 レンズの選択

次の撮影ツアーにはどんなレンズを持っていけば良いのですか?

この質問を実によく受けます。せっかく出かける撮影旅行、それも海外となると失敗はしたくないし効率良く撮影したいと思うのが当然でしょう。

コンパクトカメラなら迷いようがないのですが一眼レフの場合は豊富なレンズが揃っているだけに誰しも迷ってしまいます。広角が良いのか望遠が良いのか、あるいは単体レンズかズームか…。各レンズの特徴をざっと見てみましょう。

<広角・望遠・マクロ・標準レンズ>

まず、広角レンズの特色は「広く力強く表現できること」。快晴のお花畑と上空の巻雲を偏光フィルターを使って撮影する時など広角の独壇場です。被写界深度(ピントが合う範囲)が深く、被写体によほど近づいて撮らない限りほとんどにピントが合った(パンフォーカス)写真が撮れます。また、ビルを見上げた場合など歪みが強くなりますがその分「迫力」が表現できます。

さらに、カメラぶれが少ないのも魅力のひとつ。望遠の200ミリレンズなら250分の1秒を切らないと安心できませんが広角の28ミリなら30分の1秒でも大丈夫です。

次に望遠レンズの特色は何といっても被写体を大きく写せる事とそのバックのボケ味でしょう。特にボケ味は絵画では表現できない、カメラだけが成し得る世界だといえます。教室で見る受講生の作品の多くが望遠レンズで撮影されているのでその人気度がわかります。

マクロレンズも昆虫や花を撮る人には欠かせないレンズですがピントが合った被写体以外はボケるので描写は望遠に似ています。ただ、風景を撮る場合には深度が浅いのでピンボケにならぬようご注意を。

標準レンズは広く写すとか大きく写す、といった特徴がないのであまり人気がありませんが50ミリの1,4などは明るさの割にはコンパクトなのでいつもカメラバッグに入れています。三脚が使えないときなどかなり暗い所でも手持ちで写せますし、被写体に接近してピントを合わせるとバックが望遠やマクロとは一味違ったボケ味となります。値段も安いのでオススメのレンズです。

<ズームレンズと単体レンズ>

世はまさにズームレンズの花盛り。店頭でも通販でも「ズームレンズのセットで○○○○○円!」と安さ、便利さを強調しています。確かにレンズ交換をしなくても済む、というのは便利でズームの最大の魅力はここにあります。

先日、わずかの間に行なわれる儀式の撮影依頼があり、選んだのはやはりズームでした。室内だったので明るいズーム(大きくて重いレンズですが)で撮影しましたが、レンズ交換しなくてもよい便利さをつくづく感じました。風景を三脚を使用して撮影する場合などはコンパクトなズームで良い訳ですからさらに便利です。

その極め付けとして最近、24〜200とか28〜300といった広角と望遠を一体にしたズームが話題になっています。これ一本で全くレンズ交換が不要なので便利さではダントツです。これをデジタル一眼に付けて外国を撮影してきた人が「感度を400にすればほとんど手持ちで撮れた。便利で止められんワ。」と言っておられました。

このタイプのズームはF4〜6、3と暗いため手持ち撮影の場合はどうしても感度の高いフィルムを使用せざるを得ません。デジタル一眼では感度を400に上げたぐらいではさほどノイズを感じないので良いのですが銀塩フィルムですと粒状性や発色がどうしても低下します。それでもいい、この便利さでこそ生み出せる作品をものにするのだ!という方にはオススメ。

ズームレンズの欠点としては明るいレンズが作れない、大きく重くなる、などの他にたとえば28〜80のズームの場合、28ミリの広角側で使用したときには「タル型収差」といって画面の周辺が樽のように外側に歪みます。80ミリの望縁側で使用したときには逆に「糸巻き収差」といって内側に歪んでしまいます。障子のような四角い物をまっすぐに写したい時には次に述べる単体レンズを使わねばなりません。

さて、単体レンズはズームレンズと長所・短所を分け合っています。歪みは少ないし明るくって軽く小さいのはありがたいのですが頻繁にレンズ交換をしなくてはなりません。あぁ、一体どうすれば良いのでしょう…。

<まとめ>

それぞれのレンズに長所・短所があるのがお分かりいただけたと思います。ボーナスでどのレンズを買おうか、と迷っておられる方はカタログで比較するのはもう止めてメーカーのショールームか量販店へ出向き、実際に扱ってみてご自身の手に馴染んだレンズに決めましょう。撮影と同じく、カメラ・レンズを決めるのもあなたのセンスなのです。

ちなみに私は仕事では急いで撮影することが多いので主としてズームレンズを使用し、教室実習やプライベートでは単体レンズを交換しながら各レンズの持ち味を楽しむようにしています。

さぁ、今日は絶好の撮影日和です。あなたはどのレンズを持って撮影に出かけますか?

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