第61回  こだわり歳時記

冬の鳥  

遠くカムチャッカ半島より飛来したユリカモメが冬枯れの鴨川を優雅に舞っている。


古来より万葉集にも詠まれ、都鳥(みやこどり)とも呼ばれるが、それはユリカモメではないとの説もある。しかし、琵琶湖を塒(ねぐら)とし、朝早くに比叡山を越えて鴨川へやって来て、夕方には再び琵琶湖へ帰る姿を見ているとこれはまぎれもなく都鳥だと思う。


ところが都鳥=都の鳥ということからユリカモメが東京都の鳥に指定されている。しかし、都(みやこ)という言葉は、長くわが国の中心であった京都を意味するので何かしっくりとこない。


上の写真は左京区の葵橋上流で撮影した。ユリカモメが群舞している写真はよく見かけるので一羽だけを写してみた。大きく羽を広げて飛ぶ姿はまさに「都鳥」と呼ぶにふさわしい。高速シャッターで写すと背景が止まってしまうので、スローシャッターで流し撮りをして動きを表現した。
他にもカモやシラサギなどの鳥たちは、冬の絶好の被写体である。鴨川以外にも嵐山の大堰川や桂川、嵯峨広沢の池や北区の深泥池など水辺を探そう。氷の割れ目に浮かぶカモや降雪の中にたたずむシラサギなどは冬にしか写せないモチーフである。


都心部にこれだけの自然が存在することは珍しいといわれる。京都は昔から住まいの中に通り庭や坪庭があり、また街中でこのような自然を味わうことができるなどぜいたくな都市なのである。


鴨川をどりのシンボルマークである「鴨川千鳥」は絶滅寸前であったが、生態系への配慮から治水工事を中止したところ最近復活していることがわかった。一年前に京都新聞が報じたが、なんとも心温まる「みやこ」のニュースである。
春になれば再び北へ帰って行く鳥たちを静かに見守りたい。
                  (京都新聞 1月10日掲載)