第66回  こだわり歳時記

潤 う  

平年より少し遅れているがまもなく梅雨入りだろう。デジタルカメラは特に水に弱いので、雨の日の撮影はカメラをぬらさないように注意したい。

さて、今年は降雨量が少なく、琵琶湖の水位が異常に低いという。そのため淡水魚などの生態系に異変が起きているそうだ。降りすぎるのは困るが、少ないのも困る。

雨といえば暗い、陰気、うっとうしいなどネガティブに捉えられるが今回はもう少しポジティブに考えたい。

降るべき時に雨が降り、必要な水分が十分に満たされた時に大地が潤(うるお)うのである。そのため「潤う」ということばには豊かになる、ゆとりができるという意味があり、家計が潤うなどといった使い方をする。

上の写真は北区の大徳寺で撮影した。松の枝葉が雨に洗われ、湿った土の香りが地面から立ち上がってくる。雨粒が輝きながら何もかもがきれいになりましたよ、とささやいているようだ。

こうして雨が土にしみ込んで木々が息を吹き返し、畑の作物が成長する。京都には多くの社寺があり、その境内などで土に接することが多いが、他の大都市では地面のほとんどが舗装され土を見る機会が少なくなった。そのため、短時間に大雨が降った時に排水が間に合わず、マンホールから雨水が溢れ出し、浸水などの被害が出ている。

また、快適なはずのエアコンが反対に体調をくずしたり、地球温暖化の原因にもなっている。自然の摂理に逆らわずにスローに生きよ、と天の声が聞こえてくるようだ。

出先で急に雨が降り出した時など少し予定が狂ってもイライラしたりするのはよそう。その時は雨宿りをしながらじっと雨音に耳を傾けてみる。雨の強弱や場所によっていろいろな音を聞くことができるだろう。

こうした雨の風情を楽しめるような「心の潤い」を持ちたいものである。
 
              (京都新聞 2007年6月13日掲載)