第7回 プロとアマの同時取材

ギリシャ・エーゲ海撮影旅行から帰国しました。期待通り連日の快晴で、真っ白い家と真っ青な海が撮影できて(私の顔は真っ黒に)参加者の皆さんに喜んでいただきホッとしています。参加者の多くは私よりも先輩の方がほとんどで、70歳以上の方もおられたのですが皆さんのお元気なのには驚きました。長時間飛行の疲れなどものともせずに、ヨイショ、ヨイショと丘の上の撮影ポイントまで上ってこられる姿を見て、「写真を趣味にしている若さ」を感じました。皆さんも健康のためにゼッタイ写真を続けて下さいネ。

さて、帰国して2日後に「spanky フォトセミナー」が開催されました。
これは京都写真材料商組合青年部が主催するもので、初心者や女性を対象とした初めてのセミナーです。梅雨の最中だけに天候が心配でしたが当日の朝はどしゃぶり。中止か延期か、ハラハラしながら集合場所に行くとなんと30名を超す参加者がすでに集まっているではありませんか!
こうなったら予定通りやるしかありません。雨さえ止んでくれたらなぁ〜と空を恨めしく見上げると…するとどうでしょう、それまでの強い雨脚が急に衰えて小雨となり空が明るくなってきたのです。しばらくはお寺の方丈で撮影し、次の撮影地に向かう時には雨はすっかり上がって一日のセミナーを無事に終了することができました。
それにしてもあの大雨警報の中を集まって来られた皆さんのバイタリティには感心しました。そのチカラが天候を回復させたのかもしれません。アマチュアのパワーに脱帽!です。

今回より「プロとアマ」についてお話しますが、そこで登場するのが昨年の夏に私のアメリカ大西部取材に同行したTさんです。さしずめTさんがヤジさんで私がキタさん、略して

ヤジさん キタさんの 遥かなる大西部(その1)

Tさんは会社社長で年齢は私と同じ。写歴は2年ですが染色の勉強をしていただけに上達も早く、作品にキラリと光るものがあります。教室に以前は絵を描いていたという方などもおられますが「写真」との出会いがその人を決定付けることがあるようです。「写真表現」がその人にピッタリの表現方法だった、という場合に当然そうなりますよね。Tさんの場合、まさにその通りだったようです。

「今度アメリカへ行く時、一緒に連れていってくれないか?」
Tさんからそう言われた時、一瞬とまどいました。助手としてならともかく、Tさんは旅費など自分の分はすべて支払うと言う。すると対等に行動せねばならない。プロが仕事で撮影するモチーフと、アマが趣味で撮影するモチーフとは当然異なります。はたしてうまくいくかどうか?

「プロの撮影ぶりを遠くから見ているだけでもいいから…。」
そんなもの見たって仕方ないじゃん、と思うのですけどアマチュアの人には興味があるのかも知れません。Tさんの好奇心、探求心にしたがって一緒に行けばこちらも勉強になることがあるだろうと同行を決意。早速カリフォルニアに住む友人に電話して、天候や観光事情などを確認してからレンタカーやホテルの手配をして準備は完了。あとは初めての「プロとアマの同時取材」の出発を待つのみです。

出発の前日、ある会合でTさんと会いました。 「準備はどう?」 と聞くと、 「それよりもアメリカはまだ銃を撃ちまくってんの?」「どうして?」「アメリカの映画をビデオで見ているとガンとカーチェイスばかりで恐くなってきた。」と言うんです。なるほど、初めてアメリカへ行く人はこうして映画なんかで予備知識を仕入れてから出発するんだ。ぼくも最初はそうだったなぁ〜と懐かしく思い出しながら、娯楽映画だからそうなっているだけで、ふだんのアメリカは平穏無事であることを力説しました。もっと良く知ろうと思ってビデオをいっぱい見て逆効果となったようです。

ところがビデオの次に彼の好きなインターネットは大いに効果がありました。
西部の国立公園をいくつかまわるのですが、場所も名前も分からないところが一個所あり手がかりの写真をTさんに渡しておいたところインターネットでそれを探し出してくれたのです。何と便利なものだ、と感心しました。そして大型のガイドブックも買って読んでいるとのこと。慣れてしまって準備に力が入らないプロと、一生懸命準備をするアマ。
出発までにもそれなりに違いが出てきたようです。
このままで「プロ」大丈夫かなぁ〜?

でもこの心配は空港に着くなり消え失せました。搭乗手続き、荷物預け、機内でのスチュワーデスとのやりとりなど「慣れたもの」デス、ハイ。なんたってこちらは20年もの経験があるんだゾ、だまってオレについてこい!とすっかりリードしている自分に満足していつも以上においしいジントニックを飲み干すと毛布をかぶって心地よい眠りに就きました。
そのあとで後部座席の窓からTさんがすばらしい夜明けの写真を撮影しているなんてまったく気付かずに…。(つづく)