下記を読んで岡本太郎の作品の根源をつかむことができました。
「メキシコへ行くと、私は全身がわくわくふるえるほど嬉しくなってしまう。明朗で、強力な彩(いろどり)にみち、濃厚な生活感があふれている。(中略)かつて高度な古代文化を誇ったマヤ民族、それがスペインなどに滅ぼされて混血し、今日では独自なラテン・アメリカの彩りとして花ひらいている。(中略)これにはメキシコを征服したのがラテン系のスペイン人であったという点が幸いしているかもしれない。
私はインドに旅行したことがあるが、民衆の肌ざわりが中南米とはあまりに違っているのに驚いた。たとえ貧しく、裸足(はだし)で歩いていても、メキシコのインディオは陽気だ。陰惨な気分はまるでない。だがインドは何か深刻で、救いのない感じがする。(中略)
これはイギリスの統治の質を思わずにはいられなかった。イギリスをはじめ、オランダなどプロテスタント系が征服し、植民地化したところはどこでも白人は原住民ととけ込まず、人種的な差別が見られる。それにくらべてラテン系ははるかにおうようで、より人間的だ。平気で原住民と交わり、混血児をたくさん作るし、その土地の文化や生活を受け入れて楽しむ。貧富の差はあっても、人種的な差別感はない。」
(岡本太郎著「美の世界旅行」新潮文庫)
行く先々で出会う数々の造形に、狭い固定観念に捕らわれない、直接に身に応えてくるものを見極めたいと思っていた岡本はメキシコの文化の中に、彼にとっての芸術の真意と言えるべきものを見つけ出したようです。
そういえば彼の作品にはインディオの魅力が満ちあふれているように思います。
私も「芸術家」になるためには、岡本のように今までの常識をひっくり返すような作品を創らなければならないのでしょうねえ。
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