随想 第98回 観光写真と作品
  



まず上の写真を見て下さい。洛北圓光寺の庭園です。石組みの庭と満開の桜、そして青空の近景・中景・遠景がそろった完璧な絵葉書写真です。これを見た人が「行きたい」と思えば観光写真として十分機能したことになります。

次に見ていただくのは桜の左下に見える幔幕のアップ写真です。この写真には春の陽を受けて幔幕に映った桜の影と手前の桜しか写っていません。これは作者が感動した一瞬を切り取ったもので撮影した場所の紹介にはなっていません。つまり場所は関係なく作者が最も魅力を感じたシーンを定着させた作品なのです。

風景写真家としてデビューしてから観光写真を約20年間撮り続けました。次に写真教室の講師として個性ある作品創りを指導して早20年が過ぎました。プロなので注文があれば説明的な写真も撮りますが、最近はどうしても作品的な見方をするようになっています。

SNSなどで写真が氾濫する時代になり、フツーの写真ではだれも驚いてくれません。皆さんも個性あふれる作品を目指して下さいね。