フランス編(1) 芸術の都 パリ(その1)

建築美

ロンドンからパリへは飛行機を使った。ゆっくりと旅を楽しむのなら船や電車で行きたいところだがこちらは仕事、時間を有効に使うため効率よく廻らなければならない。

到着したシャルル・ド・ゴール空港(アエロガールT)を見て驚いた。アメリカやイギリスのように機能本位ではなく、動く歩道を駆使した円形の建物でそれ自体がアートなのだ。デザイン優先で不便なのでは?と思ったがどのゲートからでもほぼ同時間で中央の入国検査場に着くようになっているところはさすがである。

タクシーで空港から25キロ離れたパリ市内へ入る。一番に見たかった凱旋門へ回り道をしてもらい、目の前の威風堂々の姿を見てまた感動。シャンゼリゼ大通りからコンコルド広場を曲ってすぐに正面に大きくはないが荘厳な建物が見えた。近づくにつれ荘厳さよりも優美さが増してきてその美しさに目がクギ付けとなった。運転手に「あれは?」と聞くと「メデレーヌ」だという。いつも鼻声のフランス語の発音はカナダ東部で経験済みだったがやはり解からないのでガイドブックを見たら「マドレーヌ寺院」だった。

そのあとオペラ座をチラッと見て(これも素晴らしい!)ホテルに着いた。初めて訪ねた町で車中から見ただけでこれほど感動したのは初めてであった。アングロサクソン系の国とは異なる華麗な建築美を見てさすが芸術の都だ、と納得した。

オムレット

カンゲキはさらに続く。

ホテルで荷物をほどいたあとカメラを持って町に出た。オペラ大通りから脇に入ったところに小粋なレストランがあった。機内で軽いランチ(サンドイッチひとつ)が出ただけなので急に空腹感を覚えその店に入った。

さて、メニューを見るが慣れないので解かりづらい。値段と見比べながら探しているとあった、あった。Omelette…たぶんオムレツだろう。10種類以上ある中からハムらしき物を選んで注文した。そのあと飲み物を聞いてくる。日本のように水が出ないので欲しければミネラルウォーターを注文しなければならない。もちろん有料である。水にお金を出すぐらいなら、とビールを注文した。ウェイターが「ビアー?」と顔をしかめて席を去ると廻りの客達の視線がこちらに注がれているのに気がついた。

しばらくするとウェイターがビールとフランスパンを持ってきた。料理を一品注文すればパンがついてくるようだ。まずはビールをぐいと飲む。そしてパンにバターを塗って口に入れた。その頃から廻りの視線が再び気になりだした。誰かが「ジャポネ(日本人)?」とささやいている。その時、かって友人がフランスで「水とビールを飲むのはドイツ人と日本人だけだ。」と言われ悔しい思いをした、と嘆いていた事を思い出した。

そう言えば誰もビールを飲んでいない。みんなワインだ。でも別に良いではないか。日本人はビールが好きなんだ。好きなものを飲んで何が悪い! でも、フランスパンはうまいけどビールとはあまり合わないなぁ…。

さぁ、オムレット(オムレツ)がきた。アツアツを頬張る。ウ〜ン、これはうまい!思わず声が出そうになった。どこかの国のようにテーブルに置いてある塩や胡椒を使って自分で味付けなどする必要はない。ドーバー海峡を渡るだけでかくも味が変わるものなのか。ヨーロッパもアメリカと同様、南へ下がるほど美味しくなっていくのだろうか…。

美味しいオムレットを食べ始めた時にビールが空になった。これもフランスパンと同じくビールには合わないようだ。思い切ってワインに変えるか、それとも日本のオトコを代表して(ツマラナイ意地を張って)もう一本ビールにするか…。

パリに着いたその日に撮影以外のことで重要な決断をしなければならなくなってしまった。             つづく