物をそのまま写し撮ることを物撮り(ブツドリ)といいますが、そこに着目した写真展が二か所で始まりました。
ひとつは滋賀県立美術館で3月23日まで開催中の「ブツドリ:モノをめぐる写真表現」展。
開催概要では「ふと目に入った日常の「モノ」にレンズを向ける。カメラを手にしたことのある人であれば、誰しもが経験したことがある行為ではないでしょうか。(中略)本展は「モノ」を撮影することで生まれた写真作品を、この「ブツドリ」という言葉で見なおし、日本における豊かな表現の一断面を探る試みです」と案内されています。
まずはブツドリとはいえ「写真でしかできないような表現を目指した作品」として安井仲治が紹介されています。
安井 仲治《斧と鎌》1931年 東京都写真美術館蔵
斧と鎌を撮っただけでなく強烈な影を生かして主題が浮き立っています。
次に抽象表現の先駆的な存在である山沢栄子が取り上げられています。

山沢 栄子《物体》1986年 東京都写真美術館蔵
二人に共通しているのは物(ブツ)を「独自の視点」で撮影していること。
何も演出せず、また写真的な工夫(加工)をせずに作品に仕上げているのです。
それにはデザイナーに負けないだけの「造形感覚」が必要です。
さて、もう一つは京都工芸繊維大学美術工芸資料館で5月31日まで開催中の「畠山崇の写真-京都を切り撮る-」展です。畠山 崇(はたけやま たかし)は当HPの「フォトレッスン-写真は記録か表現か」で紹介しています。
会場での撮影は許可をいただけなかったので次のチラシをご覧ください。
https://www.museum.kit.ac.jp/img/20250120.pdf
技巧を凝らさない写真家なので、このチラシの「3豆腐」と「4干菓子」を見ればまさにブツドリ作品ですよね。
しかし、2点とも背景を黒バックで引き締めており、「4干菓子」では配列に写真家のセンスが光っています。
ほかに京都の庭園や風景を切り取った作品が展示されていましたが、このような物撮りに良いものがありました。
同じ「物」を「撮る」のでも写真家によって異なる「物」になります。
対象物の理解度によって商品写真で終わる場合もあれば作品になる場合もあります。
作品にするためには撮る前にその「物」を十分に理解しなければなりませんがそれはやりがいに通じることです。
写すってやはり楽しいことですね。
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