島田謹介・・アマチュア時代にあこがれていた写真家です。
彼は1900年に長野県に生まれ1920年に大手新聞社の報道カメラマンとなり1955年に定年退社。以降は、報道写真から風景写真を主体とした叙情に溢れた作風に大きく転換して多くの作品集を残しました。そして1994年に94歳で亡くなります。
作品集の中では地元を撮影した「雪国」(暮しの手帖社、1962年刊)に最も感銘を受けたので少しご紹介します。
(以下「雪国」より)
いかがですか。彼が活躍したのはデジタルカメラが登場する前ですからフィルムによる撮影で、しかもあまり技巧に走らずにストレートに撮っています。そのせいか作品に温かみを感じます。
作画姿勢を彼は次のように語っています。
「私の写真は、写してどうしようというのではありません。そこには、何の思考も、深い意味づけも、つながりもありません。ただ、直感的に、その折々の感興に応じて、素朴に写し撮ったという程のものです。カメラをむけて、目で見て感じた美しい風景をファインダーの中にすくい取る喜びとでもいいましょうか、絵のスケッチと同じような気持ちで、カメラのメカニズムを通して、瞬間的に対象を定着できることにしあわせを感じ、気持ちを満足させています。」
まさに写真の原点を語っていますね。
2001年に開設された長野市立博物館の付属施設「門前商家ちょっ蔵おいらい館」では、彼の作品が常設展示されています。
「ちょっ蔵おいらい館」とは「ちょっとお出でください」の語呂合わせによる命名で、信州の方言で彼の作風を物語る素晴らしいネーミングです。
次のサイトで彼の作品を見ることができます。
https://www.city.nagano.nagano.jp/museum/oirai/05_jyousetu.html
彼以外にあこがれた写真家は入江泰吉や土門拳、そしてアンセル・アダムスなどですが、退職後に日本の叙情を探し求めた島田謹介が急によみがえったのは私がやりたかったことを彼がやったからだと思います。
旅を続けながら自分の好きなテーマだけを撮影することができたらどんなに楽しいことでしょう。残している教室をすべてやめてしまえば可能ですがそれはそれでご隠居さんの旅となり、仕事の合間に撮影する、というやりがいではなくなってしまいます。
このホームページで「日本の旅」「世界の旅」を連載していますがこれも島田の写真集とは違ったかたちで見ていただいているわけです。
それぞれのバックナンバーを見ていただければ私の叙情を味わっていただけると思いますのでもう一度ゆっくりとご覧ください。
とはいえ小旅行でもいいから仕事抜きで彼のような旅をしてみたいものですねぇ。
(協力 門前商家ちょっ蔵おいらい館)
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