こうして王さんとの二人旅が始まるのだが彼がまだロッキーを見ていないと言うのでもう一度引き返してロッキーを見た後、エドモントンから飛行機で東部へ行くことになった。
再びロッキーを今度は「二人で」訪ねてレンタカー代とホテル代が一人の時と変わらないことに気付いた。欧米のホテルはツィンルームが原則で一人でも二人でも料金は同じ。余分の出費は食費とレンタカー以外の交通費だけ。心強いガイド付きのツアーとしては意外と安くすみそうだ。
「今夜はシャトーレイクルイーズに泊まりませんか?」
彼にそう言われて驚いた。このホテルはレイクルイーズの湖畔にある瀟洒なホテルとして有名だが高価なため一週間前は近くのロッジに泊まった。「そんな予算はないよ。」
「とりあえずフロントへ行きましょう。」
フロントで交渉していた彼が笑顔で戻ってきた。料金を聞いてビックリ!ロッジと変わらない料金なのだ。「どうしてこんなに安くなったの?」と聞くと
「実は…」と言って見せてくれたのがカナダの公式ガイド証。これをもったガイドがゲストを案内した場合は特別料金で泊めてくれるというのだ。これはありがたい!彼の存在が急に大きくなる。
さて夢のようなホテルで一泊した後、一人の時には行っていないジャスパーを経由してエドモントンへ。そこから東部のトロントへ飛ぶ。ここでは西部では見られない大都市の建築物が我々を待ち受けていた。まず、市庁舎を見てショックを受ける。官庁とは思えぬ印象的なデザインに何枚もシャッターを切ってしまった。他にも高さ544メートルのCNタワーやイートンセンターなど「田舎者」は空ばかり見上げて首が痛くなる始末。
次の日はバスで2時間かけてナイアガラへ。想像を絶する大瀑布。感動のあまりここでも何枚もシャッターを切る。新婚旅行のメッカ、といわれるだけにカップルが目立つ。観光案内所へ行けば無料で「新婚旅行証明書」がもらえると聞いたが、さすがにオトコ二人で行くのは……やめた。
トロントの次はモントリオールへバスで移動。オンタリオ州からケベック州に変わるのだがここがクセモノ。言語がフランス語になるのだ。表示は英語も併記されているが話す言葉はほとんどフランス語。さすがの王さんもお手上げのようだ。
「ボンジュール」 「 トレビアン!」…世界で最も美しい言葉だと言われるだけに聞いている限り、素晴らしい響きだ。しかしコミュニケーションとなると話は別だ。東洋人が一生懸命しゃべってる英語ぐらい聞いてくれてもえーやんか!
次第にストレスがたまってきてついにぼくの歯が抜けてしまった。虫歯にかぶせてあった詰め物が取れたのだ。痛むので王さんに歯医者さんへ付き添ってもらった。ここでは何とか英語が通じた。僕の痛みを通訳してくれる王さんが頼もしく見えたが、僕と同じように口を開けて覗き込んでいる彼の顔がおかしかった。
ケベック州を開拓したのはフランス人であり途中から英国領となったが独自の伝統を大切にしているのだという。この州ほどではないがカナダでは他の州もかなり独自性を打ち出しているとか。星条旗の元、一致団結する隣の国とは同じ北米大陸にありながらどこでこの違いが生じたのであろうか。
さぁ、次はいよいよその星条旗の国へ入る。(次へ)
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